懺悔の小部屋〜6号室〜  

罪深い仔羊達よ!悔い改めよ!〜


落とし込み部所属・くわぞーさんの懺悔

釣行日 2001年10月7日(日
時間 6:00〜16:00
場所 大磯漁港
釣法 イガイ・サナギによる前打ち釣り
釣果 クロダイ計5尾(49・47・41・33・32cm)


『吟味を致す。面を上げーい!』

『…・』

『久方振りであるのう、くわぞー』

『へい、どうもお奉行様』

『ほう、裁きも二度目ともなると、ずいぶんと余裕があるではないか、かさごのくわぞー。ふむ、まぁよい。

さて、くわぞー、その方、何ゆえこの調べの場に引き出されたかはわかっておるであろうな』

『へい、お奉行様、それがあっしにはさっぱりわかりませんで…。何せゆんべいきなし追浜村の岡っ引きの親分さんが家にやってきまして、そのまま番屋にしょっぴかれたわけでして…』

『ほう、何も身に覚えがないのに引っ立てられた、こう申すのだな』

『へい、そのとおりで…』

『ほう、何も身に覚えがないとな、ほう、ほう…。まぁよかろう。時にくわぞー、先般の調べで奉行の問いに対し、いちいち「へい」の返答は不要であると申し渡したのは覚えておるな』

『へい、そりゃもちろんでさぁ、お奉行様』

『ほう、覚えておるとな。ならば問うくわぞー、ここまでの奉行とその方のやりとりで、何遍「へい」を言ったか

思い出して数えてみるがよい』

『あちゃー、そう来やしたか、お奉行様。ちょっくら待ってくんなさいよ、えーっと、ひぃ、ふぅ、みぃ…と、三回

ですな、お奉行様』

『ほう、三回とな、くわぞー…・。たわけが!四回であるぞ、四回!』

『こりゃすまんこって。けど、お奉行様、お言葉でありますが、別に良いではありませんか、「へい」っつっても。この方があっしは話し易くって、正直にものが言えるんでさぁ』

『ほう、正直に言えるとな…』

『へい、そうなんでさぁ。んで、あっしも言わせて頂きますけどね、お奉行様も「へい」と同じようなことを言っておられるんじゃねぇかと…』

『何、奉行が「へい」をとな』

『いやいや、「へい」ではありませんで、「ほう」ですワ』

『ほう、をか?』

『へい、今言われた「ほう」を入れてすでに九回ですワ、九回。』

『……・・』

『おや、どうされました、お奉行様』

『…良い考えがある、くわぞー。その方、最初に「へい」を申せ。その後に奉行が「ほう」と応えよう。それを幾度か繰り返すのじゃ』

『はぁ?』

『えーい!言われた通りにせぬか!』

『へい』

『ほう』

『へい!』

『ほう!』

『へい!』

『ほっ!』

『へい!』

『ほっ!えーっさ、えーっさ、えっさほいさっさ、おさるの籠やだほいさっさ…』

『お奉行様…・』

『どうじゃ、くわぞー、いけるであろう。ん、どうじゃ?』

『お奉行様…お調べの方は…』

『わかっておる、くわぞー。その方の気をほぐしてやろうとしてのことである。調べに戻る』

『へい』

『ほう、「へい」とな』

『…・・?』

『その「へい」を二度繰り返すがよい』

『へい、へい』

『ほう…。いま一度繰り返すがよい、くわぞー』

『へい、へい』

『ほー  へいへい、ほー。与作は木ぃ〜を〜切る〜 へいへいほ〜 へいへいほ〜』

『…・』

『どうじゃ、くわぞー、これもいけるであろう。ん、どうじゃ?』

『お奉行様、こう言っちゃなんですが、かさごのくわぞー、笑えない状況になってきやした。』

『まぁ、そう無理せずともよい。笑いたい時は笑うがよい。身体にもよいであるぞ』

『はい』

『おっ、「はい」ときたか。』

『お、お奉行様、よもや、こんだぁ、「はい」で何やらやらかすんじゃ…。勘弁して下せぇましな』

『安心せい、まだそこまで考えておらぬ』

『ふー…  (ったく、これ以上寒くさせられたんじゃ、風邪ひいちまうってもんだ)』

『ん?何か申したか、くわぞー?』

『あ、いや何も…』

『調べにもどろう。先般の大磯密漁の調べ、並びにその裁き以降、その方が身を置く福浦の寄り合い所は如何な状況にある』

『へい、あのお裁き以来福浦ちぬ組の同志は密漁することなく、皆ちぬ釣りに精進しております』

『ほう、誰も密漁はしておらぬのじゃな?』

『おっといけねぇ、いました。いました。「角刈りのたつ」という若いものが二度ほど福浦以外で密漁をし、代官の鈴木久之新さまから座布団をもらったとか…』

『ふむ。してその密漁の場所は?』

『へい、何でも横須賀村の沖にある堤、と聞いておりやす』

『横須賀村であるか…大磯ではないのだな?』

『へい、横須賀村でしこたま釣ったと…』

『ならば良い。して、福浦のちぬ組のその後はどうなのじゃ?』

『へい、浮き釣り所帯を仕切っていた「年無しの並平」さんのお仕え先が伊達藩になったとかで、みちのくの石巻村に行っちまったんですが、その後を受けてというかなんというか、浮き釣り所帯の同志達が団結し、えらい釣果を上げておりまして…。そんで、ここに先ほどの代官様が入り込み、浮き釣りで年無しと称する大っきな黒鯛を何匹も釣る始末で…合わせて名前は知らんのですが、江戸の殺し屋って呼ばれるお人が、町の小娘を釣るみてぇーにひょいひょい黒鯛を釣るもんで、そりゃぁもう…』

『なるほどのう。してもう一つの所帯があったではないか。そちらの方はどうなのじゃ?』

『落とし込み所帯でございますね。こちらの方も「めばるのひろ助」さんが取り仕切ってがんばっているんでやんすが、今一歩浮き釣り所帯に追いつかない訳でありまして、へい』

『ほう、ほう』

『…ときたら、ほーたる来い、ですか?お奉行様』

『くわぞー、今度は奉行が笑えぬ状況にあるぞ』

『へい、すまんこって』

『それはそうと、鈴木久之新と組んで福浦外の黒鯛釣りをそそのかした、廻船問屋の、何といったかのう…』

『まるみ屋の旦那さんですね』

『そう、そのまるみ屋の主はどうしておるのじゃ?』

『これがお奉行様、あろうことか代官様同様、落とし込み所帯に入り込みまして、大活躍でさぁ』

『何、活躍とな?』

『へい、そりゃもう、落とし込み部はこのまるみ屋の旦那さんと、めばるのひろ助さん、あっ、それともう一人、所沢の菓子問屋の兄さんとであらかた釣ってるようなもので…』

『…・』

『お奉行様、お調べの場が妙に静かになっちまいやしたねぇ。ここらで笑いの一つも取らないと、こうしてこのお調べの場にいらっしゃる奉行所の皆様が居眠りこいちまって、お調べに支障が出るんじゃございやせんか?』

『その方が心配することではない。奉行は今、思案しておるのじゃ。静かにせぬか。…・とは言え、その方が言う様に奉行所の皆が居眠りされても困る。よかろう、くわぞー。ほんのいっときその方の戯れ言を許す。』

『おぉ、さすがは名奉行といわれるお方だ。そんでは遠慮なく笑っていただきやしょう!』



★以下、前代未聞の奉行所内における密漁容疑者によるおやじギャグの連発★

<あっ、ジュースこぼしちゃった! ティッシュがないからティッシュー(撤収)するぞ>

マリナーズの佐々木が一言☆ 大リーグなんて目じゃーねぇ>

<(待ち合わせしていた)ジャイコが来た。じゃ行こー。>

<ゴミ 落としちゃった〜。 ごみ〜ん>

<カモ!こっちへこい! カモーン!>

<サボテンの陰で、さぼってんな!>

<Aさん:「ひゃくえん(100円)食べてよ」  Bさん:「ひゃーくえん!」>



『…くわぞー、もうよいであろう。笑うどころか、奉行所から人が居なくなってしまったではないか』

『お、お奉行様、あっしもやってて、自分の背筋がぞーっと…』

『であろう。それにしてもくわぞー、その方、変わった罪人よのう』

『罪人って、お奉行様。あっしはなーんにもやっちゃいませんですぜ』

『まぁ、よい。この調べで罪人となるのは目に見えておる。』

『ですから、お奉行様、一体全体何の罪であっしをお調べですかい?さっぱりわかりませんやね』

『自分の胸に手をあてて考えてみるがよい』

『へい、けどあっしは自分の胸より、町の小娘の胸に手をあてるほうが好きでして…』

『ほう、その方もか。実は奉行もそれが好きでのう。先日も押し込みの調べで、呉服問屋にいったのであるが、ここの娘がまた…・くわぞー!何を言わす!』

『うへへ・・ですから、お奉行様。あっしには覚えがないと』

『ならば言おう、くわぞー。大磯の宿場に近い港で、ここ数ヶ月の間にたいそうな密漁が続いておる。その密漁一身の中にその方の影がちらほらと見え隠れしておる。合わせてさる筋から奉行のもとにたれ込みがあり、その方が密漁を企てそれを実行に移したとな』

『あーにをおっしゃいますやら、お奉行様。一体何を証拠にそのような・・』

『ほう、くわぞー、証拠とな。ならば示そう!これ、証人、こちらへ参れ』

(ここから登場人物が三人になる関係で人物名を記させていただきます)

(くわぞー 以下く)『…・』

(奉行 以下奉) 『証人、顔を上げ、くわぞーにその方の顔をとくと見せるがよい』

(証人 以下ま) 『はい、お奉行様、これでよろしいでございますか…』

    ……・・

(く)『うっ、うわっ!まるみ屋の旦那!』

(ま)『ふぉ、ふぉ、ふぉ、ふぉ お久しぶりでございますね、親分さん。まるみ屋でございますよ』

(く)『な、な、なんだってまた旦那が…』

(ま)『ふぉ、ふぉ、ふぉ、いけませんね、親分さん、浮気は・・ふぉ、ふぉ、ふぉ』

(奉)『まるみ屋、くわぞーにこうなったわけを話してやるがよい』

(ま)『はいはい、お奉行様、それではお話させていただきましょう。ふぉふぉふぉ…まず、くわぞー親分、

    いけませんねぇ、秘密ごとをお話になる時は人を選びませんと。私どもの手代で「みや吉」というものが

    おりましてね。よく働く手代で私もかわいがっておるのですが、このみや吉が最近どこか落ち着きを無

    くしたようでございましてね、ええ。訳を尋ねますと、くわぞー親分から、大磯での密漁話を聞いたとの

    事でございましてね。なんでも親分さん、既に弐拾枚も密漁に成功したとかで…これを聞いて手代の

    みや吉、いてもたってもいられなくなり、何とか密漁に行くべくその方法を思い悩んでいたらしいので

    ございます。これでは落ち着きも無くしますですねぇ、ふぉふぉふぉ。そこでみや吉に私の方から知恵を

    つけ、親分さんのその後の密漁の程を聞き出し、逐一私とめばるのひろ助さんに報告させたという次第

    でございましてね、ええ。ふぉ、ふぉ、ふぉ』

(奉)『ほう、めばるのひろ助の耳にも入っていたのだな。して、その後もくわぞーは密漁を続けたのであるな』

(ま)『はいはい。みや吉の話しによりますと、その後も密漁を続け、とうとう参拾の大台に王手をかけたとか

    で、先だっての日曜日、それをとうとうお取りになったとの事でございました。ですね?親分さん』

(く)『…・』

(ま)『親分さん、いけませんねぇ、参拾でやめておきませんと…ふぉ、ふぉ、ふぉ』

(奉)『ん?くわぞーは参拾で密漁をやめたのではないのか、まるみ屋』

(ま)『はいはい、お奉行様。その日は大漁とかで、参拾四までいったそうでございます。

    もうこうなると、親分さんの自慢話にしかきこえませんでございますねぇ、ふぉふぉふぉ…』

(奉)『絵に描いたような悪行であるな、くわぞー』

(く)『…』

(奉)『それにしても福浦のちぬ釣り組は空中伝播式網目瓦版を用い、それぞれがいつどこで何を

    釣ったか伝達しているのであろう。くわぞーはそれをしていなかったのであるか?』

(く)『…・』

(ま)『ふぉ、ふぉ、ふぉ、それを親分さんにたずねるのは酷でございましょう、お奉行様。かさご漁の

    お仕事がお休みで、お身体のお調子がよい時は福浦で釣りをしていたようでございますが、たま

    に、そのような状態でも福浦に顔を出さない時がありましたですねぇ。このような時に大磯に密漁

    に行っていたのでございますね、親分さん。ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ…・』

(奉)『まぁ、それについては福浦ちぬ組の空中伝播式網目瓦版の過去の台帳を調べればわかることで

   ある。まるみ屋、暇な時にでも台帳を調べてみるがよい』

(ま)『ふぉ、ふぉ、ふぉ、お奉行様、それは奉行所のお仕事でございましょう。私どもは一介の廻船問屋で

    ございまして、そのような事はとてもとても。ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ』

(奉)『裁きを言い渡す。かさごのくわぞー、福浦ちぬ組落とし込み所帯の窮地も省みず己の欲の赴くまま

    に黒鯛を釣り続けた悪行、許されるものではない。よって、向こう参拾年の八丈遠島を申し渡す。

    これにて、一件落着!』



   ………………・



(ま)『いつもながらのお奉行様のお裁き、お見事でございます。ところでお奉行様、大磯の密漁について

    は今後の事もありますゆえ、どのような形で密漁をしていて、どのよう黒鯛が釣れるのか、きちんと

    見極めておく必要がございますでしょうねぇ、ふぉ、ふぉ、ふぉ、ふぉ…』

(奉)『奉行もそれを考えていたところである。ついては、調べには水先案内が必要になろう。まるみ屋、

     その方信頼のおける案内人を知らぬか?』

(ま)『それはお奉行様、くわぞー親分を使うのが最適かと。そこで御相談でございます、お奉行様。

    ただいまのくわぞー親分へのお裁きにわずかばかりのお情けを頂ければ、このまるみ屋、いかよう

    にも親分と握りますが…』

(奉)『まるみ屋、その方、悪ではなく「商売人」よのう』

(ま)『何をおっしゃいますやら、お奉行様。私どもはただの廻船問屋でして』

(奉)(ま)     『ふぇーへっへっへっへっ…・』  『ふぉーふぉっふぉっふぉ』



(尚、奉行所内で使わせて頂きました、素晴らしい駄洒落の数々は、ひささんの後輩さんのHP 『ドライブ野郎』 の駄洒落コーナー『ダジャレンジャー』から勝手に借用致しました。すみません。ひささんよろしくお伝え下さい。)





[大磯港の密漁証拠絵図その3]


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