そろそろ真剣にこの遊びから足を洗わないと・・・ホントにやばいよなぁ。
ママは相変わらず相手にしてくれる気は全然ないみたいだし、地元の仲間の視線も気になるし・・・
この辺りが潮時かな。
それじゃ、今まで遊んでくれた女の子達に、最後にちょこっとだけ挨拶してこようか・・・。
台風22号が関東地方を直撃、浮気者のH氏の地元・福浦ではトラックが宙に舞う程の大嵐に・・・。
どうもこういう時に限ってH氏の浮気の虫が騒ぎ出すようで、今日もなんだかんだと理由をつけて、いつもの「クラブ天の川」に足を向けるのでした。
カランカランカラ〜ン
マスターK
「いらっしゃいませ。」
H氏
「やぁ、Kさん!ここのマスターの仕事もすっかり板についてきたねぇ。」
マスターK
「はい、お陰様でかれこれ1年程になりますから・・・。」
H氏
「ふ〜ん、もうそんなになるのか・・・。昔は風来坊のようにあちこち歩き回ってたのにねぇ。」
マスターK
「えぇ。あの頃は私もまだ青かったですから。やっと腰を落ち着けられる場所を見つけましたよ。」
H氏
「へ〜、そりゃ良かった。でも噂によるとお店の女の子達と何度か遊んでるって聞いたけど・・・ホントなの?」
マスターK
「えっ!?と・・と・・とんでもない!誰がそういう噂を流すんでしょうかねぇ・・・ま、全く困ったもんです・・・。」
H氏
「ふ〜ん、その慌てっぷり、な〜んか怪しすぎるんだけどなぁ・・・。まぁいいや。ところで今日は女の子達、もう来てるの?」
マスターK
「はい、もうすぐ出勤予定でございます。さぁさぁ、それまで御席でごゆっくりお寛ぎ下さい。」
H氏
「うん、ありがとう。今日はあの奥の席がいいなぁ。」
マスターK
「かしこまりました。16番テーブルでございますね。どうぞお掛け下さい。
H氏
「あっ、それからさ、俺の連れもいい席に案内してあげてくれる?」
マスターK
「これはこれは!いつもお席で正座をされている礼儀正しいお客様ですね。毎度ありがとうございます。・・・え〜と、お名前は確か・・・」
H氏
「あっ、今日は彼、お忍びで来てるから、そこから先はチャックね!」
マスターK
「これは失礼致しました。それではこちらのテーブルの方へどうぞ。」
マスターKに案内されてそれぞれのテーブルについたH氏と連れの○○○○氏、ワクワクドキドキしながら女の子の来るのを今か今かと待っております。
ところが・・・
待てども待てども女の子は1人もやって来ません。
いつもの事とはいえ、気の短いH氏、やはりこう待たされると流石にイライラしてきます。
折から外は台風一過だと言うのに天気予報が大きく外れて小雨がパラつく始末・・・。
H氏の欲求不満は最高潮に達してしまいました。
そんな最中、マスターKがやって来て何やらH氏に話かけています。
マスターK
「あの〜、誠に申し上げにくいのですが、私ちょっと野暮用がありまして、本日はここで失礼させて頂きます。」
H氏
「あれっ?もう帰っちゃうんの?・・・で、女の子は?」
マスターK
「あいすみません。もうとっくに出勤してもいい頃なんですが・・・1人も来ないなんて今までなかった事なんですけどねぇ・・・。」
H氏
「なんですけどねぇ・・・って、そりゃないよ!俺はKさんが『女の子はすぐ来ます』って言うからず〜っと待ってたのに!あっ!ひょっとしたらKさんが遊んじゃうからみんな疲れて出勤できないんじゃないの!?」
マスターK
「め、滅相もございません!・・・えっと、あの・・・とにかく時間がないのでこれにて失礼致します。どうぞごゆっくり・・・」
そう言うが早いか、マスターKは一目散に駆け出して行ってしまいました。
残されたH氏と○○○○氏、更に常連さんが何人かやってきた「クラブ天の川」は、何だか急に寂しくなってしまったようです。
と、その時です。
突然玄関のドアが開いて、この店のママが駆け込んで来ました。
カランカランカランカラ〜ン
ママ
「まったく、天気予報なんてあてになりゃしない!もう、ずぶ濡れだわ!」
H氏
「ありゃりゃ!ママじゃないか!久しぶりだな〜!今日も会えないかと思ってたのに。」
ママ
「あら、スーさん、いらしてたのね。・・・さっきマスターから電話があって、『女の子1人も来てない』って言うから慌てて出てきたの。きっとお客さん怒ってるだろうな〜って思って急いできたんだけど・・・スーさんがお客さんだったら安心だわ。」
H氏
「ふんだ!もうママのその手には乗らないよ!そんな事言いながらいっつもいい時にいなくなっちゃうんだから!」
ママ
「やだわ、スーさん。いつもスーさんが他の女の子と仲良くしてるから、私遠慮してたんじゃない!」
H氏
「へ〜、そんじゃ今夜は俺にトコトン付き合ってくれるの?」
ママ
「う〜ん、どうしようかな・・・。」
H氏
「ほ〜らな!なんだかんだ上手い事言って、またそ〜っといなくなっちゃうんだろ!」
ママ
「違うわよ・・・まだ他にもお客さんいるし・・・」
H氏
「そんなのどうでもいいじゃん!今日は俺だけと遊んでよ!」
ママ
「・・・そうね、それじゃそうしましょうか!・・・で、今夜は何処へ連れて行ってくれるの?」
H氏
「え〜〜〜!!マジ!?」
ママ
「やだわ、スーさん、自分から誘っておいて・・・。」
こうして2人は、霧雨の降りしきる夜の巷に肩を並べて消えて行ったのでした。
その後2人が何処で何をしたのか・・・そんな野暮な事は聞かないでおきましょうね。
そして、思いを遂げたH氏が本当に「クラブ天の川」通いをやめたかどうか・・・それもまた内緒という事で・・・。
|