懺悔の小部屋〜13号室〜  

罪深い仔羊達よ!悔い改めよ!〜


ウキフカセ部所属・モンキーさんの懺悔

釣行日 2002年7月6日(土)〜7月7日(日)
時間 6日 4:00〜16:00
7日 3:00〜12:00
場所 宮城県 田代島
釣法 ウキフカセ釣り
釣果 クロダイ 42cm



連続時代劇スペシャル小説

赤目の猿の
【みちのく旅日記・悪代官のお供偏】

江戸を出発してしばらく経つ。そろそろ指定された茶店に着く頃合だ。
この店の女主人は客商売が長いだけあって、そのにこやかな笑顔と愛くるしい表情で知られている。
休日のこんな時刻は、家族連れで結構賑わっている筈だ。
 
『武蔵の国“川口”村の“不二家”にて戌亥の時にて待つ。』
福浦村のお代官様より、『個別空中伝播式網目報』により指令をうけ急いでいるのだ。
隣には、やはり指令を受け先ほど合流した“江戸の殺し屋”が遠い目をして何事か考えている。
 
我々は“福浦”で黒鯛を釣り上げるのが目的で集まった集団である。
“江戸の殺し屋”と言うのはもちろん暗号名で本名、職業、経歴など一切不明である。
とは言っても、福浦の寄り合い一味はほとんどが謎に包まれており、“江戸の殺し屋”が特別なわけではない。
因みに自分は“赤目の猿”と呼ばれている。
もっとも普段は暗号名で呼び合うわけも無く、『かずさん』『もんきぃさん』と俗称で呼んでいる。
普段、福浦の寄り合い一味は“浮きふかせ組”と“落し込み組”に分かれて釣り上げた黒鯛の数やら大きさを競い合っているのだ。
近年、福浦以外で釣れた黒鯛等を浮気と称し金襴緞子の座布団が懸賞として掛けられ、これを目当てに懺悔する輩が多くなった。
かさごのくわぞー親分、角刈りのたつ、回線問屋まるみ屋さん、南蛮渡来の伝道師、風小僧・・・座布団は全て落し込み組が独占している。
浮きふかせ組も何度か座布団を狙ったがことごとく失敗に終わっていた。
この事態に憂いを感じた“お代官様”こと鈴木久之新様が、瓦坂屋の誠吉から仕入れた情報を元に召集をかけたのだ。
伊達藩に潜伏中の年無の並平の案内の元、福浦の寄り合い一味・浮きふかせ組の“隠密!みちのく黒鯛密猟!帰って来ません取るまでは。”の旅が始まったのです。
 
話を元に戻しましょう。
“江戸の殺し屋”が遠い目をしたまま重い口を開いた。
『もんきぃさん・・・めっちゃ具合悪いっす。』
聞けば先週頃から体調を壊している上、ほとんど睡眠時間も取らずに臨んでいると言う。
『無理せんで下さいよ。』
『大丈夫っす。海に行けば治ります。』
おいおい・・・本当か?人間そんなもんか?大丈夫か?この男。(また、使ってしまいました。)
 
“不二家”に着いた江戸組を待っていたのは、お代官様以下横浜組の面々だった。
ん?なぜ風小僧“あり”が・・・さては落し込み組の間者か?それにどこぞの抜け忍が・・・。
九ノ一“陽炎おけい”と申すのか。
一抹の不安を感じながらも、金襴緞子の座布団に目の眩んだ怪しい集団は、一路陸奥の国は田代島を目指して旅立ったのでありました。
 
“年無の並平”と石巻で合流したのは丑寅の時を少し廻った頃合だっただろうか。
再会の挨拶もそこそこに、そこから更に二十五里ほど離れた給分浜まで急いだ。
何しろ出船時間は暁七つ、寅の時が迫っており、これに乗り遅れると洒落にならない。まさに無駄足。
しかしこの時点で、無理を重ねた強行軍は、卒倒寸前。
特にお代官様は青白い顔で、『遠い。疲れた。もうよい、宿で寝る。』
なんて我侭なんだろう。まったく、開いた口が塞がらない。
一方、死にかけていた“江戸の殺し屋”は途中購入した妙薬“弓蹴皇帝液”が効いたのか、あるいは燃え尽きる直前の花火なのか海が近づくと本当に復活しかけている。
『釣るッすよー。』
恐るべし、“江戸の殺し屋”。
『まったく、釣り人の鏡やね。お代官様も見習って欲しいやね。ったく・・・。』
などとぼやきながら、時間一杯で滑り込み目指す沖磯へ・・・。
途中色々あったのだが、こいつはお代官様にお任せするとして・・・。
磯に上がった我々は、一時の時間を惜しんで支度する。竿を出す。
しかしめばるの猛攻に会い、餌が持たない。
『“めばるのひろし”さんが居れば、大喜びだろうな。』などと思っていたその時、二つ隣でいまだ気分が優れないお代官様の竿が満月に・・・。
『ちぬじゃー。』
今までの声色とは全く違う良い声だ。
お代官様の恵比須顔に俄然やる気のでた我々は気合十分に竿を握る。
さらしの中に“浮”が入っていく。竿が曲がる。
確かな手応えに期待が膨らむ
『来たっすか?』
と風小僧。
赤茶色い魚体・・・赤目じゃないっすよ。
『愛舐めっす。』
『猿、武楽離じゃないのか。
と、お代官様。恵比須顔である。
ふんっ!愛舐め美味しいもんね。尺だもんね。
暫くしてお代官様が本命をもう一枚釣り上げる。
風小僧と陽炎おけいは飛魚だ。
お昼を廻って年無の並平と江戸の殺し屋が隣に磯替えしてきた。
暫くして年無の並平の竿が満月に・・・本命だ。
江戸の殺し屋の愛舐めを挟んで、年無の並平が二枚目の本命を上げた。
 
結局この日はこれで納竿。
明日に期待をかけて宴会に突入。
宴会後、明日の準備のため(呑み直すため?)風小僧と共に買出しへ。
山ひとつ越えて帰ってきた頃には皆爆睡。おいおい。どういうこと?(そら疲れてるって。)
ただ一人、江戸の殺し屋だけが心配して起きていてくれた。この男、意外と優しいのである。
丑三つ時に目が覚めた。
『もんきぃさん。寝れないっす。』
江戸の殺し屋である。聞くと・・・
『出たっす。』
『え?』
『窓のそばを歩いて行ったっす。』
『・・・!』 きゃ〜〜〜〜〜。
 
翌日、磯に渡してもらい、疲れの残る体に鞭打って竿を出す。
暫くして、江戸の殺し屋が叫ぶ。
『お代官様がまた本命あげたっす。三投目っす。
今日はお代官様とは別の磯に乗っていたが、恵比須顔が眼に浮かぶ。
なんとか、一枚上げたい自分は、沖根の向こうに出来たさらしを仕掛けを取られるのを覚悟で責めたっす。
すると浮が海中に・・・。
来たっす。
あの特有の引きに持って行かれそうになりながら、根に潜られたらお仕舞とばかりに強引に手前までもって来たっす。
なんとか浮かせたところ、視線を感じたら、きゃー!江戸の殺し屋に見られてるっす。
ここは一発玉網入れだー。
手前のひな壇に波が押し寄せ黒鯛が潮の満ち引きに合わせて行ったり来たり。
慌てた自分は差し出す玉網も行ったり来たりで黒鯛を小突く始末。
江戸の殺し屋は指差して大笑い。
何とか取りこんで計測、四十二万両の黒鯛に満足。
あーあ。玉網入れもっと練習しよ!
 
そんなこんなで、福浦の寄り合い一味・浮きふかせ組の“隠密!みちのく黒鯛密猟!帰って来ません取るまでは。”の旅は終了いたします。
見事、座布団を獲得した一行は、来た時のお代官様の渋面とは打って変って、満面の恵比寿顔で、福浦へと帰っていったのでした・・・。





赤目の猿が釣った1枚の図





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